【実習で見た現実】重度心身障害児病棟で感じた“親”という存在と、心に残ったひとつの疑問

こんにちは、看護師歴10年以上のnurse ojiiiです。
今回は、僕が看護学生だった頃の小児実習で経験したことを、ひとつ書いてみようと思います。もう15年近く前のことですが、昨日のことのように鮮明に内容を覚えています・・・

特別な学びが多かった実習でしたが、その中でも忘れられない光景、そして今でも心に残っている「ひとつの疑問」について話します。


◆ 重度心身障害児病棟ってどんな場所?

実習で配属されたのは、「重度心身障害児病棟」というところ。
ここには、重度の知的障害と運動障害の両方を抱える子どもたちが生活しています。

対象年齢はおおよそ3歳から18歳まで。
個人差はありますが、多くの子が…

  • 寝たきり、もしくは移動に全面介助が必要
  • コミュニケーションが難しい
  • 摂食・排泄・入浴など生活すべてに援助が必要
  • 医療的ケア(気管切開・胃瘻・吸引など)を受けている

つまり、「日常生活のすべてにおいて他者の手助けが必要な子どもたち」が過ごす場所です。
実際に医療は高齢者と関わることが多いと思います。
割合としては約8割が高齢者になるといわれています。
その中で、高齢者以外で、尚このような重度心身障害者と関わる看護師はもっと少ないと思います。


◆ 看護学生として感じた“命の強さ”と“医療の役割”

初めて病棟を訪れたとき、正直言うと戸惑いました。
言葉が通じない、表情も乏しい、意思疎通がほぼ取れない子どもたち。

でも、関わっていく中で、小さな変化や反応がいかに大切かを学びました。

  • 目線が合った
  • 指を少しだけ動かした
  • 声にわずかに反応した
  • 音楽に笑顔を見せた

その“かすかな反応”に、看護師さんたちは本当に大きく反応して、喜んでいた。
ここには、**「目に見えない命の力」**が確かにあって、それを支える看護がある。そして、実にその子たちのことを本当によく知って、理解していて・・・・物凄い経験則なんだろーなーと思いました。
それが、学生の僕には本当に衝撃でした。


◆ そして、ある日、気づいてしまったこと

その病棟には約40人の患者さんが入院していました。
お母さんが頻繁に面会に来る子もいれば、たまに来る子もいたけれど…
このような病棟になると、患児だけではなく、家族を含めた全体の看護が必要になってきます。

ある日、指導者さんからこう聞きました。

「ここの子どもたち、全員に母親はいるけど、父親は1人も来ないんだよ」

……絶句しました。

よく考えると、**40人全員に父親が“いない”なんて、統計的にはちょっと考えにくい。
つまり、
“いるのに来ない”**ということ。

そこに、男だからこそ何とも言えない悲しさが込み上げてきました。


◆ なぜ、父親は“いない”のか?

「なぜ父親は来ないのか?」
その問いは、今でも僕の中で答えが出ていません。

  • 現実を受け入れられなかったのか
  • 支えきれずに離れてしまったのか
  • 仕事や社会的立場のせいなのか
  • “男”としての弱さだったのか

もちろん、すべての家庭に事情があるし、母親が偉い/父親が悪い という単純な話ではありません。

でも、“母親だけが闘っている”ように見えたあの病棟の風景は、僕の心にずっと残っています。


◆ 家族の形ってなんだろう

重度心身障害を持つ子どもたちを育てるというのは、精神的にも経済的にも、本当に大変なこと。
24時間体制の介護や医療的ケア、兄弟児のケア、就労の制限、周囲からの理解のなさ…

そんな中で、**「母親1人で抱え込む家庭」**が圧倒的に多い現実。
もしかすると、それが日本の福祉・社会構造にも関係しているのかもしれません。

でもやっぱり、「一緒に育てよう」「逃げないでほしい」
そう願わずにはいられませんでした。


◆ 僕が今、伝えたいこと

この記事を読んでくれているあなたに、お願いがあります。

  • 自分に障害のある子どもがいたら?
  • パートナーが弱音を吐いたら?
  • 支える人が一人で抱えていたら?

そのとき、「自分は何ができるだろう」と考えるきっかけにしてほしいんです。
逃げないで、一緒に泣いて、一緒に笑ってあげてほしい。
そんなことの相談に乗るのも僕たちの仕事だし、福祉を紹介できるんだと思います。

病棟で見た母親たちの背中は、どこまでも強く、どこまでも寂しかった。

だから、伝えたい。

「あなたは1人じゃない」って言える人が、もっと増えてほしい。


まとめ

  • 重度心身障害児病棟には、医療・看護の力と、家族の愛情が支えになっている
  • 実習を通して、命の強さとケアの大切さを学んだ
  • 「父親が誰一人来ていない」という現実に胸を打たれた
  • 看護師として、人として、逃げない優しさを持ちたいと思った

本日も読んでいただきありがとうございました。
本日の内容は少し重くなってしまったと思います・・・

でもこれが、日本の現実でもあるのです。
少しでも、相談に乗ったりできる環境があるというのを理解してもらえると嬉しいです。
それではさようならー

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